言葉を濁す―中国語の婉曲表現―

ものごとをはっきり言う主張の強い人たち―日本人から見た中国人像はそんなイメージがありますが、東洋人的な感性は共通したもので、意外と婉曲・あいまいな物言いは多いものです。TPOによっては、日本人以上にこうした表現を好むことすらあります。

筆者が思うに、その原因は大きく分けて2つあり、1つは個人の事情を公にすることを好まないことと、2つ目は相手の面子を傷つけないよう配慮すること。前者については主に、あまり好ましくない経済事情や家庭内の事情などを他人に知られることに対し、恥と感じる考えが強いこと。後者の場合は逆に、相手に肩身の狭い思いをさせることで、同じく恥を嫌う相手の感情を傷つけたり、結果、それが自分自身に跳ね返ったりすることを恐れているように感じます。

そんなわけで、「適当にその場を繕う」ための言い回しも実は豊富です。今回はいくつか、さまざまな場面で使えるフレーズをご紹介します。

Yǒudiǎn shìqíng.
ちょっと用がありまして。/ちょっとわけがありまして。
※「何かする用事がある」、あるいは「ちょっと事情がある」という意味で使います。「有点」というのは「少し」という意味なのですが、それが修飾するのは、たとえば「汚れている」とか「具合が悪い」など、たいていあまり好ましくない物事です。前者の場合は、例えば道でばったり誰かに出会い、「何をしにお出かけですか?」などと聞かれ、あまり話したくない用事だった時や、話題に深入りせずに切り上げたい時、「ちょっとありましてね」といった感じで使います。後者の場合は例えば、「この前の飲み会、なぜ来なかったの?」などと聞かれ、「家里有点事情(Jiāli yǒudiǎn shìqíng /家でちょっとあってね…でも何があったかは聞かないでね)」といったニュアンスで使います。

Hái còuhe.
まあなんとか。
※「それほど満足とは言えないのだが、そこそこよい」という意味のフレーズです。「凑合」という単語の元の意味は「寄せ集める」という意味で、それが転じて「なんとか間に合わせる」という意味で使います。「还」は「凑合」の程度を強調する「まあまあ、わりと」という意味です。「最近仕事の方はどう?」などという質問はこれでかわします。実際に、仕事がそれほどうまくいっていない場合にも使えますし、本当は非常に儲かっているのにもかかわらず、相手に不快な思いを抱かせないために敢えてへり下る時にも使えます。

Bú dà fāngbiàn jiǎng.
ちょっと言いにくいんです。
※「言ってしまうと差しさわりがあります」という意思を示します。その理由は、「周囲に人が大勢いるから」「誰かに迷惑がかかるから」「明かしたくない事情があるから」なんでも構いません。「方便」というのは「便利」という意味のほかに「都合がよい」という意味があります。ですから「不方便+動詞」で「~するのに都合が悪い」ということです。ただ、「不方便讲」という言い方は角が立ちますので、「不大(あまり~ない)」を使って表現をやわらげましょう。

Hǎoxiàng shì.
どうもそうみたいですね。
※何かを断定することによって責任を負いたくない時に多用します。あるいは、その話題に深入りしたくないのでさらっと流す感じでしょうか。「あの人って最近恋人ができたみたいね」「そうらしいですね」―本当は事実を知っていたとしても、こういう受け流しが必要なシーンは、中国にも当然あります。

Yǐhòu zài shuō.
また今度改めて。
※「とりあえず問題を棚上げして、また次の機会にどうにかしましょう」という意味です。「说」というのは必ずしもここでは「言う」という意味には当たりません。「またいずれ話し合いましょう/決めましょう/やりましょう」といった感じでしょうか。「また今度」その問題を「どうにかする」のか否かは、はっきりしません。そのまま立ち消えということもままあります。

Guò liǎngtiān ba.
また近いうちに。
※直訳すると「2日後に」という意味ですが、中国語の「2」という数字は、具体的に決められない数字を指すことが多く、この場合は正確に日本語にすると「また数日後に」ということになります。もちろんこの「数日後」は、いつまで待っても訪れないこともあります。「この商品、いつ入荷しますか?」「まあそろそろでしょう」こんな感じで使います。

Méi shénme.
別に。/何でもないです。
※浮かない顔をしたあなたに「どうしたの?」と誰かが問いかけてきた時。「何でもないです。別に大丈夫」。上司にひどく叱責されたあなたに誰かが「大丈夫?」と尋ねた時、「どうってことないです。気にしていません」といったニュアンスで使います。

愛玉先生の中国語ネイティブ化計画(無料中国語講座コラム)一覧

すべての発音が収録されています。我是日本人

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  50. 第50回ビジネスにつかえるメールの定型文―その2― 
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愛玉■中国語翻訳者、ライター。 重慶大学漢語進修課程で中国語を学ぶ。その後、上海で日本人向けフリーペーパーの編集、美容業界誌の中国語版立ち上げなどに携わる。中国在住経験は4年。現在、中国ニュースの翻訳や中国関連の執筆などを行う。得意分野は中国グルメ、中華芸能。北京語言大学主催のC.TEST(実用中国語レベル認定試験)Aレベル取得。
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