歌うような中国語はナチュラルじゃない―その2―

前回のコラムで「中国語はたとえ一言一句を100%完璧な声調で発声しても、ネイティブらしい話し方にはならない」という、およそ掟破りのような事実をご紹介しました。しかし現実として、全てのネイティブスピーカーたちが、まるで京劇役者かニュースのアナウンサーのように抑揚たっぷりに話しているわけではないのです。





実際、いつもそのような話し方をしていると、聞く耳も話す口も疲れてしまいます。もっと「省エネモード」で会話しなければ、おしゃべりな中国人にとてもついていくことはできません。

そのためには、1)話の要点、2)最も強調したいポイント、3)聞きちがえてほしくない情報などの要所要所だけに、トーンをはっきりとつけて(つまり声調通りに)発話することです。そのほかの部分は、軽く流してしまってもそれほど会話に支障はないと思います。発声の力配分に緩急をつけて省エネを図ると同時に、要点だけはしっかりと訴える、そんな話し方ができると自分自身も楽ですし、ナチュラルな会話ができるようになります。

では以下に、その「緩急のつけ方」を具体的事例でご説明します。

这是(zhè shì/これは)」。これは第4声+第4声の組み合わせですが、「↘」「↘」と2度もはっきりとした下降線を描くような発声をしなくても当たり前に通じるでしょう。「这是」をひと続きの音節と考えて、2音節全体で第4声になるようなニュアンスでも問題ないと思います。たいていはそのあとに続くフレーズで意味が通じます。

大家好(dàjiā hǎo /みなさんこんにちは)」。これは第4声+第1声+第3声の組み合わせですが、こちらももうお決まりの言い回しなので、「大家」は軽く流して「好」をしっかり発音してあげればよいと思います。このフレーズで重要なのは、相手のご機嫌をうかがう「好」の部分です。ここは重く、しっかりとした第3声で発声します。全体としては、「大家(第1声~第1声)」+「好(第3声)」のように聞こえるニュアンスになります。もちろん「正確な」発話ではありませんが、「自然な」発話ではあるはずです。そのほうが軽やかに聞こえるからです。

もう少し具体的な感情を伴ったフレーズで、以下にご説明します。

Ò, yuánlái zhèyàng a!
あー、そういうことだったのか!
※このフレーズで絶対に正確な声調を心がけたいのは「这」の部分です。話し手が「おそらく『こう』だろう」と予想していたことに反し、事実は「『そう(=这)』だった」。これがこのフレーズの最も強調したいポイントですね。ですから直前の「原来」の部分は「原来」ひと続きで第2声になる程度で、また「这样」もひと続きで第4声になるニュアンスでOKです。そのかわり「这」の部分は、オーバーなくらいに急下降する第4声で発声します。

Xiànzài dōu shídiǎn le, wǒmen kuài zǒu ba.
もう10時ですよ、早く帰りましょう!
※このフレーズで最も伝えたい情報は「10時」という時間です。ですから、「十」の部分はこれも、芝居がかったくらいにしっかりと上昇する第2声で発音しましょう。また、その直前の「都」は「もう、すっかり」という意味で、意外なほどに時間が経過してしまったというニュアンスですので、これも話し手の感情表現として、「十」の次に強調したい部分。「快」も「早く帰りたい」という話者の気持ちを表現する部分です。その他の部分はあまり声調を気にせず、軽く発話します。

今回、なぜこうした掟破りの発話方法をご紹介したかというと、あまり声調にとらわれず、力を抜いて楽に会話ができるようにということと、正確な発音や声調以上に、自分自身の感情や要点アピールを優先した人間らしい会話ができるように、という意図からでした。そこまでかしこまらなくても「伝えたい」という気持ちがあれば、必ず会話は成立すると思います。

愛玉先生の中国語ネイティブ化計画(無料中国語講座コラム)一覧

すべての発音が収録されています。我是日本人

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愛玉■中国語翻訳者、ライター。 重慶大学漢語進修課程で中国語を学ぶ。その後、上海で日本人向けフリーペーパーの編集、美容業界誌の中国語版立ち上げなどに携わる。中国在住経験は4年。現在、中国ニュースの翻訳や中国関連の執筆などを行う。得意分野は中国グルメ、中華芸能。北京語言大学主催のC.TEST(実用中国語レベル認定試験)Aレベル取得。
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