「清明節」国民的行事にも地域差さまざま

旧正月(春节/ chūnjié)に端午の節句(端午节/ duānwǔjié)、中秋の名月(中秋节/ zhōngqiūjié)など、現在でも伝統的な祭日を取り入れている中国のカレンダー。まもなく4月5日には「清明节(qīngmíngjié)」という聞き慣れない祝日が登場します。これは冬至から106日目、新たな農耕シーズンの始まりを告げる時季にあたり、中国では「扫墓(sǎomù/お墓参り)」と、春を満喫するための「踏青(tàqīng/自然・田舎への小旅行)」を行う日となっています。まさに、「中国のお盆」と呼んでよいでしょう。

清明節を境に気温はぐっと上昇し、種まきの季節となることから、新しい生命や芽吹きを連想させるこのシーズン、そんな時期のお墓参りはほがらかで楽しいものになるようです。お墓の草むしりや掃除をし、果物やご馳走を供え、「纸钱(zhǐqián)」と呼ばれる冥土の紙幣を焼いて祖先にささげたら、あとは一同で墓前の宴会を繰り広げ、お供え物はすべておなかに収めて帰るそうです。また、郊外にあることの多いお墓ですから、途中で農村に立ち寄って農家がふるまう田舎料理を堪能したり、春らんまんの自然の中でお花見(赏花)をしたり、冬になまった体をあたためるためにスポーツに興じたりするのがスタンダードな過ごしかただそうです。こうした春のピクニックを「緑を踏む=踏青」と呼ぶほかに、「春游(chūnyóu)」「探春(tànchūn)」などとも言います。

伝統的かつ国民的行事の清明節ですが、こうした行事ひとつとっても、国土の広い中国では各地方の気候風土によって異なる習慣や風俗が存在します。今回は、清明節に食べる食品の違いで各地のお国柄を探ってみましょう。

南部には日本人になじみやすい食文化があるようです。日本人も春はふきのとうやわらびなど苦みを含んだ山菜類を食べますが、中国南部の人々もこうした野草を用いたものをよく食べて、春に崩しがちな体調を整えるようです。上海周辺では「青团(qīngtuán)」という緑鮮やかなあんこ入りの草団子がお墓参りに欠かせませんし、浙江省ではその変化形の「清明饼(qīngmíngbǐng)」という草餅を食べます。福建省では「润饼(rùnbǐng)」というクレープを食べます。場合によっては「春饼(chūnbǐng)」とも言われるこの料理は、ビタミン豊富な野菜をたっぷりくるんで食べ、冬になまった体を目覚めさせる知恵がこめられているとも。広東省では「芥菜(jiècài/カラシ菜)」を食べます。これは現地の方言で「芥」と“駕籠(かご)”を意味する「轿(jiào)」が同音であるため、ご先祖様が駕籠に乗って還ってくるように、との意味で食べるとか。

北部では「やっぱり卵(鸡蛋/ jīdàn)がないと清明節は過ごせない」と考える地方が多いそうです。卵は新しい生命の象徴。芽吹きの春にぴったりの食材というわけです。また、麺料理の盛んな山西省や陝西省では、女性たちが動物などをかたどった美しい「面花(miànhuā/麺細工)」をつくります。これは贈答品としても使われます。ナッツやドライフルーツをはさんだパンもよく食べられるそうです。

では最後に、清明節にちなんだ例文で、中国語の勉強もしておきましょう。

Suīrán sǎomù、tàqīng shì qīngmíngjié jīběn nèiróng, dàn shílǐ bùtóng fēng, bǎilǐ bùtóng sú, gèdì de qīngmíngjié yě shì gè yǒu tèsè.
お墓参りやピクニックが清明節の主な活動内容ではあるが、「所変われば品変わる」と言うように、各地でそれぞれの特色がある。
※以前にもご紹介した「虽然但是」は「~であるけれども」。「十里不同风,百里不同俗」は直訳すると、「十里離れれば気風も異なり、百里離れれば習慣も違う」。「各地各有…」とありますが、「その土地によって、それぞれの…がある」という意味です。この「各…各…(それぞれの)」は頻出で、ほかには「各有各的(gèyǒugède/それぞれにそれぞれの…がある)」「各走各的(gèzǒugède /それぞれが別の道を行く)」などがあります。

Sǎomù shì qīngmíngjié zuì zǎo de yīzhǒng xísú, dànshì suízhe shèhuì de jìnbù ér zhújiàn jiǎnhuà.
お墓参りは清明節の最も古いならわしだが、社会の発展に伴い、だんだんと簡略化してきた。
※ここで言う「早」は「時間軸として前の」ということで、日本語で言うと「古い」が自然です。「随着」は「~につれて」。「而」はさらに進んだ結果になることを示す接続詞で、この場合は前を受けて、「社会の発展のすえ、徐々に簡略化する結果となった」というニュアンスを出します。なくても意味が通じるように思えますが、これを挟まないと、なんとなく不自然な語感になります。

Chūntiān shì shìmín chūyóu de wàngjì, qīngmíngjié yě jiāng shì gèjiā lǚxíngshè zhēngduó de jiāodiǎn. Liánrì lái, wúlùn shì chángxiàn háishì duǎntú, yóukè bàomíng rénshù yīrì bǐ yīrì duō. Dàn duǎnxiànyóu háishì jīnnián chūnyóu de zhǔlìjūn.
春は人々が旅行に出かけるハイシーズン、清明節も各旅行社が争奪戦の核心としているところだ。遠方・近郊にかかわらず、ツアーを申し込む人々が連日増している。だがやはり、近郊旅行が今年春シーズンの主力商品となっている。
※「旺季」は「ピーク、ハイシーズン、掻き入れ時」といった意味で、ビジネスの場でも頻出単語です。反義語は「淡季(dànjì)」。「无论是A还是…」は「Aであろうと、Bであろうと」「A、Bいかんに関わらず」。「一日比一日」は「日を追うごとに」。ほかにも「一年比一年(yīnián bǐ yīnián/年が経つごとに)」「一次比一次(yīcì bǐ yīcì/回を重ねるごとに)」などと使えます。

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愛玉■中国語翻訳者、ライター。 重慶大学漢語進修課程で中国語を学ぶ。その後、上海で日本人向けフリーペーパーの編集、美容業界誌の中国語版立ち上げなどに携わる。中国在住経験は4年。現在、中国ニュースの翻訳や中国関連の執筆などを行う。得意分野は中国グルメ、中華芸能。北京語言大学主催のC.TEST(実用中国語レベル認定試験)Aレベル取得。
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