日本より旺盛?ネット発の社会現象―その1―

経済成長の著しい中国では、インターネットの普及も急速なものがあります。09年7月時点での発表では、中国全土の「网民(wǎngmín/ネットユーザー)」はまもなく3億人に達すると言われており、ネットが世論を動かしたり、新しい文化を生み出したりするほどの勢いを持ち始めています。そこで今回は、ネットの世界を代表する大きな社会現象について、2回にわたってご紹介しようと思います。

人肉搜索(rénròu sōusuǒ)」。これは近頃のネット現象でももっとも話題性のあるものです。事件の当事者やネット上で話題の人物などについて、ネットユーザーらが協力し、公式な報道では知ることのできない個人情報を調べ上げ、ネット上に公表する。これにて、事件の真犯人が判明するなどのプラス面もあるのですが、当然、プライバシー保護の観点からマイナス面も出ており、個人情報保護法の整備が急がれています。「人肉」という表現は、「用人工操作(yòng réngōng cāozuò /人力で処理する)」という意味を持っています。

网瘾(wǎngyǐn)」は、中国で社会問題となっているネット中毒のことです。勉強そっちのけでネットの世界に没入したり、ネットカフェに入り浸ったまま帰宅しない青少年の増加が問題視され、さらに、そのような子供を持て余した両親が子供をネット中毒治療施設に入れたあげく、子供がひどい虐待を受けて死亡したといった悲惨なニュースがたびたび聞かれます。「网瘾」とは「网络成瘾症(wǎngluò chéngyǐn zhēng)」の略語です。「网络」はインターネットのこと、「成瘾」は「病みつきになる」という意味(第11回コラム参照)です。

社交网站(shèjiāo wǎngzhàn)」は、中国で流行中のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のことです。日本でのmixiブームよりやや遅れて、現在は中国独自のSNSが乱立しています。代表的なものは「校園網」「開心網」。ただ、日本のSNSのようにせっせと日記を書くようなマメな利用法はなく、アプリで遊ぶことなどがメインのようです。中国人は、恋人探しやルームメイト募集まで、ネットを通じて交友関係を増やすことにあまり抵抗感がないように思えます。

では、以下に3つの例文を示します。

Fènnù de wǎngmín lìkè jìnxíng rénròu sōusuǒ, shǔ xiǎoshí nèi biàn zhǎochū shìjiàn zhǔjué de xìngmíng děng.
怒ったネットユーザーたちはすぐさま人肉捜索を決行、たった数時間で事件の主人公の氏名などを割り出した。
※「人肉捜索を実行に移す」という時には「进行」という動詞を用います。「立刻」とは「ただちに、すぐ」という意味です。「数小时(数時間)」は口語では一般に「几个小时(jǐ ge xiǎoshí)」。「便」は「就(jiù)」の文語的表現で、「すぐに、ほどなく」といったニュアンスを出す副詞です。「数小时内便…」は、「たった数時間以内で…となる」となります。「角」というのは、映画やドラマの役を意味します。主角は主人公、配角(pèi jué)なら脇役です。この場合、読み方は「jiǎo」ではなく「jué」ですので注意が必要です。

Jiātíng jiàoyù shì dǎozhì qīngshàonián wǎngyǐn de zhòngyào yīnsù, lìngwài, quēshǎo fùài de háizi gèng yì chǎnshēng wǎngyǐn.
家庭内でのしつけは青少年のネット中毒を引き起こす重要な要因となり、さらに、父親の愛が足りないと子供はさらにネット中毒になりやすい。
※「导致」とは「…という結果を招く」という意味の動詞ですが、主に好ましくない結果を引き起こすときに使います。「另外」は、前述したものに加え、「それ以外に」何かをつけ加えるときの接続詞・副詞です。ですから、多くの場合は後ろに「再、又、还(さらに)」を伴います。この例文の場合は「更」がそれにあたります。「易」は「容易」を文語的に記した形です。

Zuìxīn diàochá jiéguǒ xiǎnshì, dàbùfèn měiguó gōngsī fēngshā shèjiāo wǎngzhàn, ér yíbùfèn de qǐyè zhǐ yǔnxǔ yòng yú gōngzuò mùdì.
最新の調査結果では、大部分の米国企業がSNSを締め出しており、一部分の企業は業務目的のみ使用を許可している。
※「显示」は「(目に見えるような形で)指し示す」という意味です。「封杀」というのは締め出す、抹殺するといった意味で、たとえばある業界や仕事から干されるときなどに使われます。「允许」は「許可する」。「用于」は「…に用いる」という意味で、「于」というのは英語で言うfor(~に対して、~に向かって)、in/at(~に)、from(~より)などさまざまな意味に広く使われます。

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愛玉■中国語翻訳者、ライター。 重慶大学漢語進修課程で中国語を学ぶ。その後、上海で日本人向けフリーペーパーの編集、美容業界誌の中国語版立ち上げなどに携わる。中国在住経験は4年。現在、中国ニュースの翻訳や中国関連の執筆などを行う。得意分野は中国グルメ、中華芸能。北京語言大学主催のC.TEST(実用中国語レベル認定試験)Aレベル取得。
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